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湯
えーん、えーんと膝をついで泣いでいる一人のおなごがいだ。
正月早々の湯治場の前、それもえろう雪が降る朝方のごどで。
「あやぁーやぁー、どうなすったで?お若げぇの、こだ朝っぱらにこっだらどごでよぃ、なにがあっただが?ほら、そだ泣いでねで、この兄さに話してみねが?」
おなごは都会の娘らしぐ、洒落だ服さ着てだ。そんで涙でまなぐの周りが真っ黒になってでナ。
「ぐすん、くすん、ごめんなさい、変なところを見られてしまったわね。」
娘はおれに話しかげられで少しは気が落ぢ着いだようで、こどのあらましを話してくれだ。
「なるほどだナぁやぁ…そりゃ、おめさんの言い分も分がるような気もすっちゃぁすっげっちょ、いいが?美人の湯つってもナ?ひとたび入ったどごろでたぢどごろにばがみでぇにめんげぇ顔になるわげでもあんめぇ?」
娘がまだ泣ぎそうな顔になる。
なんだべなぁ、こだにまるっこくてめんげぇのに。っておれは思った。
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