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うなぎ
うなぎの幽体が今年も私の前に現れました。
去年やってきたときはそれはそれはぞろぞろと数をなしてやってきたので私はせいぜい10匹くらいでやってきてほしいと言ったのですが、うなぎというのはこと律儀な性格の種族のようでおよそ100匹の群れでやってきたのです。
うなぎたちがわざわざ私のところにやってくるのは祈願のためです。
なまじ、私が幽体見物などという特技をもっていることが、あの口の軽い蟹共から漏れてしまったのが原因なのです。
わたしは言うのです。
あのね、わたしはたしかにあなたたち死した者たちの姿を垣間見ることが出来ます。心も通わすことができますからあなたたちの思いを受け取ることもできなくはないのです。
しかしそれができたところで私にはうなぎの料理人、ひとりひとりに、どうかうなぎさんたちを焼かないでほしい、できたら茹でてあげて、そのうえ味付けにまで注文をつけることなどできないのですよ。
蟹さんたちからなにをどう評判を聞いてやってきたかはわからないですが。
私はその都度、どうにか諭して帰っていただくのです。
もうすぐ冬が来ます。うなぎさんたちの旬は冬にこそあるんだと教えてもらいました。
そして冬は蟹共が慰められにやってくるのです。
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