我慢大会

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「いよいよ始まりました。熱湯風呂我慢大会です! 優勝者には、名誉ある『頑張ったで賞』が贈られます。 一生において一度もこの大会に挑戦しない者はいないとも言われる、最早避けられない壁…そんな熱湯風呂我慢大会に、今年も数多くの挑戦者が集まっています。 熱さに耐えられず風呂から出た者、または『もう辞めたい』と言った者は失格となります。 一番我慢強いのは誰なんでしょうか!?」 * * * 「さあ、早速失格者が続々と出ております。 残っているのは僅か5名です。 おっと、ここで挑戦者番号492番も熱湯風呂から出てしまいました。失格です! 笑顔を浮かべており、まだ余裕があるように見えますが、どうしたのでしょうか!? 一言いただきましょう。」 492番「辞退する事にしました。 熱湯風呂を我慢出来たからって、くだらないなと思ったので。 自分で別の道を探します!」 「なんと名誉ある『頑張ったで賞』を辞退するとの事です! 492番、笑顔で颯爽と退場して行きます。 観客席からは大ブーイングです! よく聞くと僅かに称賛の声もあるでしょうか…? しかし、それを搔き消すほどの大ブーイング! 『脱落者』『異端者』などの声が聞こえてきます! …盛り上がっています、熱湯風呂我慢大会! そしてここで、なんと立て続けに1736番と2954番が失格です! 一言いただきましょう。」 1736番「畜生!俺はあいつらなんかより凄いんだ! きっとあいつらの風呂はぬるいに違いない、不公平だ! 次こそ絶対1位になって、俺が一番凄いって事を証明してやる!」 2954番「『頑張ったで賞』を手に入れられないなんて、俺は何てダメな奴なんだ… 俺は所詮この程度の人間だったのか…」 * * * 「さて、現在残っているのは挑戦者番号7359番と4268番のみとなりました。 4268番が小さな声で何か言っています。何と言っているのでしょうか? …『まだやれる』。有名な自らを鼓舞する呪文『まだやれる』を繰り返しています! 両者必死に我慢しております、素晴らしいです! 観客席からも称賛の声が聴こえています!」 * * * 「おっと、ここで4268番が再び何かを言っています。 …『もう』…?ハッキリ聞き取れません。 ここでNGワード『もう辞めたい』が出てしまうのでしょうか!? …観客席から、ものすごいブーイングです! どうやら先程辞退した492番に称賛の言葉を送っていた方々以外は、皆ブーイングをしているようです。 これはもうほぼ観客全員と言ってよいでしょう。 観客全員からのブーイングです! 4268番、どうやら持ち直したようです。 『まだやれる』と言っています!」 * * * 「…開始からかなりの時間が経っています。 7359番、4268番ともに素晴らしい成績を残そうとしています。 優勝者はどちらなのか!? おっと、ここでなんと、4268番が熱湯風呂から出てしまいました。 優勝者は7359番です! ここで素晴らしい成績を残したお二人にコメントをいただきましょう。」 4268番「もう無理…身体中が痛い… 熱くて倒れそう…水…水を… でも、俺は遂に『頑張ったで賞』を手に入れた… ほら、目の前に『頑張ったで賞』が…ふふっ、あはははっ!!」 7359番「正直、辛かったです。 あんなに憧れてた『頑張ったで賞』を取れて嬉しいはずなのに、いざ取ってみると この後どうすればいいのか分かりません…。 本当にこれが自分のやりたかった事なのか…?」 * * * 「挑戦者の皆さん、お疲れ様でした。 今年の熱湯風呂我慢大会はこれにて終了です! また来年も熱湯風呂我慢大会を盛り上げてくれる事を期待しています!」
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