はじまりのひとつめ

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はじまりのひとつめ

 俺は樽井叶多(タルイカナタ)、珍しい名前だと言われる。某ハンバーガーチェーン店の席で友人の酒川旬(サケカワシュン)とハンバーガーに食らいついていた。テーブルにはポテトとコーラ、そして煙草とライターと灰皿が置いてある。俺には代田ひかり(シロタヒカリ)という美しい恋人がいる。恋人の代田ひかりとのデートの前に友人に誘われハンバーガーチェーン店に来た。俺の大好物、ハンバーガー。断る理由がない。 「俺な、好きな人が出来たんだ」 酒川旬はそう言って俺がハンバーガーを食べるのを見ながら続ける。 「堰うらら(セキウララ)って名前で凄く、美人で、ひかりより胸はある」 「胸は関係ないだろ」 一応ひかりの名誉の為に言った。 「モデルでもおかしくない程スタイルがいいんだ」 「自身がないのか?」 俺の言葉に酒川旬は食べるのをやめてないと小声で言った。 「代田ひかりも凄く美人で胸は小ぶりだがスタイルはモデルみたいにいい、恋人は俺だ」 俺は言った。 「叶多は、たまたまだ」 酒川旬はそう言ってハンバーガーを口に詰めこみコーラで流す。俺はハンバーガーの最後の一口を名残惜しそうに食べて、いや、本当に名残惜しかったのだが。コーラを飲む。ポテトをつまみ、煙草を咥えて火をつける。酒川旬はすでに煙草を吸っていた。 「なぁ、泥棒が恋したら活力になるか?」 酒川旬は言った。 「なる。凄くなる、帰ったらひかりとイチャイチャしながらセックスするけど激しいな」 俺は言った。 酒川旬は呆れた顔をする。 「叶多は、そうかもしれないけど、俺は不安だ、やりたいけどな不安」 「旬、行くとこまで行け、俺たちは泥棒だ」 「あぁ、そうだ、で、次の狙いは?」 「3つ集める、馬、鷹、蛇の像」 「叶多、馬鷹蛇を集めて何なるんだ?」 「知らん。依頼人が言ってた」 俺は本当に知らなかった。 馬、鷹、蛇の3つの像を盗んで欲しい。依頼人はそう言っていた。三ヶ所の場所を示す地図はもらったが、あとは知らなかった。  代田ひかりとデートを楽しんだ後、ひかりと別れ、酒川旬と合流した。駅前の公園のベンチで煙草を吸う。 「まずは馬、駅前の美術展に展示されている」 俺は言った。 「ひかりとデート、どこ行った?」 「ホテル」 「いきなりか」 「いきなりだ、時間がなかったからな」 俺たちは服を黒い動きやすい服に着替えていた。俺はリュックを背負う。片手にスケボーを持ち、もう一方は煙草を吸っていた。酒川旬はリュックのみで煙草を吸っている。 「イッツショータイム」 酒川旬は煙草を棄てながら言った。足でもみ消す。 「行くか」 俺たちは美術展の会場へ向かった。  警備員室から見えないようにスケボーをそっと滑らせ俺は膝をつき手で進む。 スケボーで流れるように目的地につく。  監視室の元の電力元の部屋では酒川旬がいじっていた。同じ映像が繰り返し流れるようにする。  行くぞ。俺はスケボーで馬の像の下まで進む。リュックからスプレーを出して吹きかける。赤い線がチラチラと見えてきた。 「だよね」 俺はつぶやくと注意しながら馬の像に設置した、紐が天井の天窓に引っ掛かった。 さっさとスケボーで外に出る。鈎のついたロープを天窓付近に投げる。引っ掛かったのを確認すると昇る。 天窓をレーザーで丸く切り中のロープを引っ張る。馬の像はゆっくりと上に上がっていく。 「ゲット」 俺はつぶやくと馬の像をリュックにしまう。
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