初恋とはしか事件

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 平日でも、昼夜問わず混雑する、この喫茶店。『東北の玄関口』と言われる上野だから、ボストンバッグを持ったお客さんが多かった。東京で用を済ませた後、北の方面へ帰るのだろう。勿論、そうじゃない人も大勢いる。純粋にここの喫茶店でお茶や食事を嗜む近所の人も、ビジネスマンも多い。  かなり広い店内のテーブル席は全部で、六十ほど。いつも満席だ。古い赤い絨毯が床一面に敷いてあり、オレンジ色の蛍光灯が店内を灯す。店内はざわめきに満ちている。  庶民的なお客さんが多い中で、彼の雰囲気はかなりの圧があった。  綺麗で涼しげな目に、手足が長い。短髪なサラサラヘアで背も高く、一七五センチ前後。紺色のシャツに紺色のデニム。全部同じ色で統一されているが、それが妙に似合う。
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