初恋とはしか事件

3/29
前へ
/448ページ
次へ
 ピカピカに磨かれた茶色い靴。きっとブランドものに違いない。 リッチな雰囲気が漂う。彼は大勢のお客さんの中で浮いていた。 「あれは、M製菓の坊ちゃん!」  ここの店長兼オーナーの岩井和夫さんは、目を光らせた。四十五歳の店長は、最近は頭のてっぺんの髪の毛がなくなり始めた。 「店長、よくご存知ですね」  私は水をグラスに注ぎ、トレイに載せた。 「この前、うちに来たんだよ。お母様と一緒にねぇ。それはもう、綺麗なお母様で。最近、M製菓は東京駅の近くにもケーキ屋を出したのを知っているかい? M製菓のケーキをうちでも取り扱うことになったんだよ。ケーキセットのケーキにね」
/448ページ

最初のコメントを投稿しよう!

506人が本棚に入れています
本棚に追加