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 よく冷えた朝だった。冬はもう目の前。来月は十一月だもの。無理はないか。  夜明け前の空は、薄暗くうら寂しさに包まれていた。朝の青い光と冷気が全体敵に覆う中、外へ出た。  鉄筋コンクリート五階建ての団地が整然と並ぶ。  同じ形のベランダも並ぶ。日中は洗濯物があちこちの世帯から、雑多に干されている。階段の入り口にはステンレス製の郵便受けが並び、町内会の掲示板がある。波形の屋根が特徴的な赤羽台団地。自転車置き場があり、横には少しの芝生が広がる。  団地内には肉屋、八百屋、飲食が軒を連ねる商店街もあり、便利だ。母はその一角の八百屋でパートをしている。全部で三三○○世帯が暮らす。
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