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結局、いいものは見つからなかった。少し残念だと、界は肩を落とす。
それにしてもユウナのあの慌てようはいったい何だったのか、謎は深まるばかり。最終日にはすべて教えてくれるらしいが、それもどこまでの情報でどれほど需要があるかはわからない。
この努力が無駄にならなければな、と思う。
「それにしても、もうすぐ崩壊そうだな。このデパート」
たまに崩れて落ちてくるコンクリート。今日明日ということではないが、崩壊するのも時間の問題だ。
「そうですか? そういう知識は持っていないので、分からないんです」
「でもまだ大丈夫そうだし、気にしなくていいと思うぞ。……もしこのデパートが崩れたら、ユウナさんはどうするんだ?」
「そうですね……。その時になったら考えます。一緒に壊れるのもよし、ひとり旅するのもよし、ですね。でもここを離れたら電気が……あ、私今は発条で動いてるんでした」
「今は、ってどういうことだ?」
「いえ、何でもありません。ただ少し前のことを思い出しただけです」
「そっか」
ユウナは隠し事が苦手なのか、結構気になる発言をしてくる。地下でのことも、今のことも。プログラムされたものではない、自律した自我。こういうところを見ていると、ユウナが本当の人間に見える。
最初に感じた苛立ちは、今ではもうすっかり消えてなくなった。まっすぐな目だけれど、よく見ると悲しさを孕んでいるように感じたから。
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