散策途中での秘密の部屋

4/5
前へ
/25ページ
次へ
夜になって界が寝静まった頃。 ガチャッ 地下にユウナが来ていた。開けたドアは、界が開けようとした扉だ。その扉の向こうには、動いていない機械、バラバラになった機械、そして―― ――動いていない、壊れかけた人型の機械。ユウナはそのロボットの横に佇む。 「ユウアちゃん……。もう少しでここ、崩れちゃうそうです。私、どうすればいいんでしょう。一緒に壊れた方がいいんでしょうか。そんなことしても、何も変わらないですけど……」 ただただ話し続けるユウナ。 ユウアと呼ばれるロボットに発条はない。 「ねえ、ユウアちゃん。私、私ね……好きな人が、できました。界さんっていうんです。おかしい、ですよね。会って間もないですし、まず私はAIロボットですから。自我があるといっても、複雑な気持ちは持てないはずなのに。どうしてこんな気持ちが生まれたんでしょう。でも、今日でお別れなんですけどね。そうしたらまた、ひとりです。せっかく二日間にしてもらったのに、こんな気持ちが芽生えるなんて……」 不意に立ち上がり、泣きそうな顔でユウナは言った。 「ユウアちゃん。ではまた、です」 ガチャッ ユウナはそう言い残し、その部屋を出ていった。その部屋の中には、変わらず壊れた機械で、溢れ返っている。しかしなぜ、ここには壊れた機械しか、ないのだろうか……。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加