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「なんていうか、あっという間だなぁ。もともと短い時間だけど、さ」
日が昇り始めた朝の頃、ふたりは少し世間話をしていた。世間話といっても、街の様子だとか、今までの過ごし方だとか。面白い話はない。
「そういえば、今日は泊まればいいのか? それとも夕方くらいに出ればいいのか?」
「今日は夕方ほどにお別れしたいと思っています。なのでお昼が終わったころから、私が知っていることについてお話したいと思っています」
「わかった。じゃ、ちょっと連絡してくるから」
そう言って、界は少しユウナのもとを離れる。
「どこからお話すればいいんでしょうか。こんなこと話したことがないのでわかりませんね……。真実を言ったら、界さんは怒るでしょうか。それとも、何も言わずに去っていくのでしょうか。もしかしたら、壊されてしまうかもしれませんね。……そんなことされたら、私は悲しくてどうしようもなくなりそうです。いや、その前に私の自我は、消えてしまっていますか。でも、悲しいって言っても、私はそれだけのことをしたんですよね。本当に、どうすればいいんでしょうか……」
「ユウナさん、連絡終わったぞ」
界はそう言いながら戻ってきた。
「明日くらいには着きそうだ、って。ここからだと夕方に出て、夜に1回野宿しなくちゃだからな」
「1回野宿するのですか!? それは申し訳ないです……」
「いや、全然大丈夫だ。慣れてるし。逆に、ここで寝るのに慣れると、困るからな」
「あはは……。それなら安心ですね」
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