世界の荒廃が起きた理由

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「では、開けますね」 扉の前に立ち、ユウナは扉を開いた。 その中の光景を見て、界は目を瞠る。 想像していたよりも、想像していなかったほど、その中は閑散としていたからだ。 「ここ、は……?」 「ここは私を含め、たくさんの機会がありました。ここはデパートでもありましたが、機械をつくる場所でもあったのです。私が綺麗にしているとはいえ、まだ崩れていないのは、デパートだったということもありますけど、一番の要因はそういう技術が、あったからなんです」 「でもなんで、ユウナさん以外の機械が、こんなに壊れてるんだ? ユウナさんが動いているんだったら他の機械も動いてていいと思うんだけど」 「それは、ですね……。私が電気で動く機械だったから、なんです」 「電気で動くって言っても、それが何でそうなるかわからないんだけど……」 「電気で動くこと自体がダメだったわけじゃないんです。ただ私が、失敗作だったから、なんです。超音波や電磁波、そういう良くない波を私は発してしまっていたんです。その影響で周りの機械はことごとく壊れていって。しまいには天候までおかしくなってしまったんです」 「そんな非現実的なこと……」 「そうなんです。私もそんな非現実的なことあるわけないと思いました。でも、本当だったんです。私の周りにいた人たちも、全員……」 ユウナは目をぎゅっと瞑り、身体を震わせている。 その時のことを思い出したのか、界の反応が怖いのか。多分、両方だろう。 「それでも、作られた当初は大丈夫だったんですよ? 地下の管理をしている子がいた、と言いましたよね。私、その子と仲良しだったんです。大好きだったんです。でも、一番近くにいたから、一番最初に壊れてしまいました。その子の名前、ユウアっていうんです。私よりもずっと可愛くて、ずっと優しくて。いっそ私も壊れてしまえばな、とも思いました。でも、ここを少しでも長く守ることが、今私にできる最低限の罪滅ぼしだと思ったんです。今発条で動いているのは、1人になった後、たまたま発条で動いている時計を見つけて、真似をしてみたんです。成功したので、今私はこうやって動いているんです。もう私のせいで、みんないなくなるのが嫌だったから」 「……その話が本当だとすれば、世界荒廃について知っているというより、もともとの原因自体がユウナさんだ、ってことなんだよな」 その確認の言葉を聞いたユウナは、今度は自嘲気味に笑い、言葉を紡ぐ。 「幻滅しましたか? 幻滅しましたよね。というより、壊したくなりましたか? 殴ったら界さんの手が壊れますし、そう思うのが普通でしょう。私は発条を抜かれてば動けなくなります。近くにある固いもので殴れば私、つまりAIは壊れます。思う存分、壊してください」 少しにこっと笑うと、今度は目を瞑り、身体を震わせた。先ほどの震えとはまた違った、悲しさと怖さが見える。 その様子を見た界は決心したように、ユウナを見て言った。 「俺は――」
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