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「――…ユウナさんを壊したいとは思えない」
「えっ……。どうして、なのでしょうか?」
あり得ない、という顔でユウナは界を見る。
「私は界さんの大切な人たちを、殺したも同然なのですよ!? それを理由もなく許すなんて! どうしてそんなことが言えるのですか! あなたの周りの人たちは、そんな風に切り捨てることができることができる人達だったのですか!?」
最初の問いかけからしばらくして、ユウナは大声を上げた。
いや、怒ったというのが正しいのか。
その様子を見て、界は面を喰らってしまう。
だがすぐに持ち直し、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「許す、とは言ってない。ただそれはユウナさんのせいじゃない」
「私のせいですよ」
「違うだろ。ユウナさんは自分の意思でやったわけじゃない。たまたま起こってしまったことだ」
「でもどんな要因であれ、それを起こしてしまったのは私なのですし……」
「だから許すとは言ってないんだ。ただ、ユウナさんが悪いわけじゃないのは分かってる。それに……」
界は話の途中で言い淀んだ。そのことにユウナは疑問符を浮かべる。
「それに?」
「――…それに、そんな顔できる子が悪いとは、どうしても言えないんだよ」
「えっ……」
予想外だらけの反応だったが、最後のひとことは特に予想外すぎて、ユウナは戸惑ってしまう。界のことが好きだと自覚しているだけあって、より戸惑ってしまったのだろう。顔自体は赤いわけではないが、湯気が立っているようにも見える。
最後の最後でそんなことを言われては、さすがにユウナも参ってしまった。
「界さん、好きです……」
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