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「えっ……?」
ユウナが耐え切れずに発してしまった言葉。
その言葉が聞こえてしまった界は、顔を赤くする。
その様子に気付いたユウナは、無自覚にも言ってしまったことにが気付いた。
「い、いや。べ、べべべ別にいやらしい意味じゃなくてですね! ただ、界さん優しいなぁって! そうです! 優しいなって思っただけです!」
ユウナは全力で否定する。
界はその仕草で、明らかに恋愛感情なのだと実感した。
だが、好きだなんて言われても、界にはこたえることができない。
好きかと問われれば、好きと答えるだろう。
だがそれは、恋愛感情なんかじゃない。一緒にいた中でのユウナの言葉や優しさ。そういうものが、とても心地よかっただけ。
本当はこんな時、「俺も好き」と答えるのが道理かもしれない。だがそう答えたところで、界自身にはそんな気はなく、あまりいい方向にはいかないと思う。
まず、ロボットと人間は相容れない相いれない存在だ。
ここは否定された通りにしようと、界は決めた。
「俺もユウナさんの優しいところは好きだぞ。でも、それだけだ」
界は恋愛感情はないという意味を込めて言う。
その直前までおろおろしていたユウナは一瞬動きを止め、
「えっ……」
と零した。
少しかわいそうな気もしたが、これでいいと界は帰る準備を始める。
もうお別れだ。少し寂しい。なんでこんなことを思うのだろうと疑問に思いながら、界はドアの前まで歩いていく。
そして未だに少し呆けているユウナの方に向きなおり、言った。
「楽しかった。今までありがとう。さよなら」
そう言うとユウナはハッと我に返り、また悲しそうな顔をしてこう返す。
「私も、楽しかったです! さようなら!」
その言葉を聞いた界は、デパートを出て行った。
だが、何かを忘れているようなそんな気持ちに襲われる。
しかし、もう時間はない。早く泊まる場所を見つけないとと、そんな思考は消えていった。
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