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建物の崩壊と最後の決心
飛び出した界は、未だ崩れ続けるデパートの方へ向かう。
だが今行っても、崩壊に巻き込まれて死ぬだけ。
近づける範囲までは近づいたが、これからどうすれば、と頭を悩ませる。
何かできることはないかと周りを見渡していると、崩壊に巻き込まれているユウナを見つけた。
「ユウナさん!」
そう叫ぶが、ユウナは気付いてくれない。悔しくて奥歯をかみしめた時――
――ユウナが、自分から崩壊に巻き込まれようとしているのが見えた。
きっと、崩壊と同時に自分も壊れてしまおうと考えていたのだろう。自分を責めて責めて、責め続けていたのだろう。
全部自分のせいにして……やっぱり、そんな悲しいことにはさせたくない。
「でも、ユウナさんに助かる気がないなら、どうすれば……」
ユウナに近づけない今、ここから呼びかけるだけじゃダメだ。
気付いたといても、界の方には来ない。
幸いだったのは、ユウナは巻き込まれているといっても、そこまで重症じゃないところだ。やはり、多少の恐怖心はあるのだろう。
巻き込まれに行ってしまう前にと、必死に頭を使う。
その時、ふと疑問に思ったことがあった。それは――
「――…なんで俺、こんなに必死なんだ? ユウナさんの望んだことなら、させてあげればいいのに……。今さら少し一緒に過ごしたくらいの奴を、どうこう考えるなんてないはずなのに……」
死んでしまった人なんて、何度も見た。友達がいなくなって、孤独にもなれた。ではなぜ、こんな少しの間しかいなかった奴を、こんなにも助けようとするのだろう。そもそもユウナは人ではなくロボットだ。よけいにわからない。
……そうだ。別れの時の寂しいと思った気持ち。今の助けたいという気持ち。
「もしかすると、俺はユウナさんのことが……?」
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