32人が本棚に入れています
本棚に追加
そうやってしどろもどろしている間にも、時は進んでいる。
ユウナが、デパートに向かって歩いていった。
「ユウナさん!」
とにかく今は止めなくちゃと、めいいっぱいの大声で叫んだ。
するとこちらに気付いたのか、ユウナが界の方を向く。
そして、憂いを孕んだ笑みを向け、もう一度前を向いて進みだした。
でも、この音量ならユウナさんに届くのか!
界は決心する。この思いを、届かせることを。そんなもので止まってくれるかなんて保証はない。でも、少しでも可能性があるのなら、言おうと界は思う。
大きく息を吸い、さっき以上の声で叫んだ。
「ユウナさん! 俺もユウナさんが好きだ! さっきの好きとは違う! 本当の『好き』だ! だから、だから戻ってきてくれ!」
最後の頼みの綱。届いてくれと、戻ってきてくれと、そればかりを願う。
恐る恐るユウナに目を向ける界。その視線先には――
――この数日間、見たことないほどの笑顔があった。
界に向かって一歩ずつ歩いてくるユウナ。
その時間が、とても長く感じられる。
そして、ユウナは界のもとにたどり着き、笑顔で言った。
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!