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「で、でも界さん……。今のは、本当の気持ちなのでしょうか」
少し頬を赤らめるユウナ。今はもうその姿こそ、愛おしく思えてくる。
「ああ、本当だ。今の気持ちに、偽りはない。気づいてなかっただけだったんだ」
その時――ドカン! と音を立てながら、デパートが全て、崩れ落ちた。
「ユウア、ちゃん……」
悲しそうな表情で、ユウナはその光景を見ている。ユウアという名前は、界にも聞き覚えのある名前だった。確か、地下の方を管理していた子。ユウナが最初に壊してしまった子。そしてユウナの大切な、友の名前。
界はずっと、ユウナを見ていた。涙がにじんだような、その顔を。
どうすればいいかなんてわからない。寄りそいかたなんてわからない。
それでも界は、できる限りのことをしようと思った。
「ねえ、ユウナさん。俺はそのユウアって子を知らないから、こんなことが言えるのかもしれない。でも、聞いてほしい」
「なんでしょうか、界さん」
「壊れてしまったものは、もう二度と戻らない。それはロボットでも人間でも同じこと。それは誰かが悪いわけでも、誰が良いわけでもない。悔やんだって、恨んだって、何も始まらないのなら、また目先に新しく増えた幸せを、取りに行ってもいいんじゃないか? そのユウアって子も、ユウナさんに幸せになってほしいと思ってるはずだ。それともユウアって子は、ユウナさんをそんな風に苦しめたり恨んだりする子だったのか?」
こんなことを言っても、自分のエゴだと界は思っている。それは、きれい事だと。
界の言葉を聞いたユウナは、少し柔らだ表情になった。どう転ぶか分からなかったので、心なしかとても嬉しく感じる。
「そうかもしれませんね。曇り空が、晴れ空になった気分です」
「それなら、よかった」
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