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「ところで、どうして貴方はこんなところに、いらしているのですか? もしや、このデパートに、いらしてくれたのですか?」
「いや、俺はここに来たというかなんというか……」
デパートにいたのかと訊かれて、どうこたえようか迷う。
ここに来たというのはあながち間違いではないが、買い物をしに来たわけではないので、反応が難しい。
どうしようか界が慌てていると、ユウナは少し考える素振りを見せてから、話し始めた。
「――…これは私の想像なのですが、もしやここで夜明けを待とうとされたのではないでしょうか?」
「そう、だけど……。なんで、わかったんだ? やっぱり、そういうのはダメだとかか?」
「そうではありません。ただ、今の外はとても人が住めるようなところではないので。ここなら、一晩くらいは過ごせますし」
「……ダメじゃないのか。じゃあ、ここで泊まらせてもらう。俺は入り口付近で寝てるから」
界はそれだけ告げて、すぐにそこから離れた。
今ここがどうして綺麗に整理されているかが分かったので、もうユウナと話す必要もない。どうして外がどうなっているのか知っているのに、未だ整理し続けるのか、そこは謎のままだが、特に必要のない考えだと界は思い、そのまま入り口付近へ向かった。
向かう途中、ユウナのことを思い出しながら、界はつぶやく。
「あの顔、幸せそうでイライラする……」
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