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「…。」
…困ったことになった。…私はレズだけど、まさかこんなとこで口説いたりはしない。…でも口説きたい…。
…ぁああ困った…!!!
「あの……ゆづきさん、体調でも…?」
…まさかの名前呼びにドキッとするが、上の名前を忘れられただけだろう。
…ところで、このタイミングで告るとか最高に格好悪いと思う。ますます言える訳が無くなった。
「…ぁあ、えっと…。」
「…飲み物取って来ましょうか…?」
向こうに屋台がある。…クリスマス飾りはしてあるが、何かダサい。
「…ぇえ。…体調は大丈夫です。ちょっとぼうっとしていただけで…」
「そう。良かった。」
その笑顔は良くない。私の体には毒だ…。
「…はぁ。」
噴水の縁に腰を下ろす。
…華やかなイルミネーション。噴水も光を浴びて輝くようだ。
…可愛らしいサンタ達、その笑い声に、自分の息も白いのだと思い出す。
「…ん。」
…急に寒くなったと思ったら、頬に熱い何かが当たる。缶コーヒーだ。
「ユ~ズキ~~。」
「あら…どうしたの麻倉さん?」
桃子さんと奈月が戻って来た。
「…もうフラれて来たのか。」
「フラれたって言うなぁーっ。」
…いや、フラれた反応じゃないかそれは。
男「…。」
「…何か、こっちをチラチラ見てるのがいるけど。脈アリなんじゃない?」
「え、ホント!?♪
うわっ!」
…ちょっと転びそうになって、すっ飛んで行った。
「もう、麻倉さんったら。」
「…。」
…しかし、この2人は付き合ってるんだろうか?(…有り得ないな。)
「はぁ!?は~~…。
※××□○△っ」
男「あの…ちょっと良いですか?」
…私じゃないな。勘で分かる。
桃「え……私?」
男「はい。」
桃子さんに手を振って、奈月の方へ歩き出す。
桃「えぇ…?」
奈月「は~…。」
ヤケ飲みしたか。コーヒーっぽい匂いがする。
奈月「…て言うか、桃子さんって確か彼氏いた気がするんだけど。」
項垂れていたのに突然顔を上げた。…いや、フラれたんじゃないのかよ。めげない奴だな……♪
──桃子さんがごめんなさいっって感じで頭を下げて、そこに奈月が割り込んで行く。
…無理だろと思いつつ、祈るように私は笑う。
「…はぁ。」
こっちに戻って来る桃子さんを見て溜め息を吐く。…さて、何と言って距離を取ろうかね…?
──クリスマスだと言うのに。…いや、クリスマスだからか。どうせ誰も彼もに恋人がいるに違いない。
私は未だに、恋人がいたことは無い。
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