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機械的なアナウンスを遮り、疲れた声のアナウンスがホームに響いた。どこかで人身事故が起こったらしい。線路の奥に見えるロータリーにも既にタクシーの姿はなく、タクシー乗り場には珍しく列が出来ていた。
はぁ。と息を吐くと、俺は会社用の携帯を開いた。上司の番号を画面に出し、深く息を吸い込んでからボタンを押す。
ーーープルルルル。プルルルル。
1回、2回と乾いたコール音が鳴る。このまま出てくれなくてもいいと願ってしまう。……だが、現実は願った事とは大抵反対のことが起こるもので、「もしもし」と言う言葉に俺の淡い期待は儚く散っていった。
「お疲れ様です、村山です。すみません、電車の遅延で遅れます。タクシーも捕まらなくて……はい、すみません」
そこに居るわけでもないのに、やはりどうしても頭を下げてしまう。頭をペコペコさせながら俺はまだ人で溢れるホームで列に並んでいた。
電話を切ると再び溜め息が漏れる。はぁ…と見上げた空には飛行機曇が空を2つに割っていた。
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