あの日、あの時、あの場所で。

1/3
前へ
/3ページ
次へ
高校でいじめられていた。 会社でもいじめられている。 親からも、お前はどんくさいからって呆れられた。 別にどんくさくなりたかった訳じゃない。 少しでも良くしようと頑張ってきた。 頑張って、 がんばって、、 …がんばって、きたんだけど。 「…もう、疲れちゃったや」 こぼれた言葉は誰もいないホームに転がった。明るくなってきたとは言え、始発を待つ人はこの駅にいない。 …もう泣く気力すら残ってはいなくて、涙も出てこない。 プルルルルルーー。 電車が到着する合図が鳴る。目も覚めそうな音の中、私の耳に少年の声が聞こえた。 『ネぇ、コッちに来テ?』 下に向けていた視線をハッと上げると、目の前に5・6歳くらいの男の子がいた。何でだろう…目が離せない。 『ほラ、こッチだヨ!』 手を引かれて1歩足を出す。1歩、また1歩と前へ進む。次の1歩……と、踏み出した途端、私の身体はフラっと前へ倒れた。 そこからはスローモーションのようで…運転手のおじさんと目が合った。おじさんは驚いた顔をして、慌ててブレーキを掛けてるようで…。 そんなことを冷静に考えていると、ドンッと身体に衝撃がきた。 …気がつくと線路の中にいて、視線の先では男の子がニッコリと笑いながら手を振っていた。 『モう、こレデ、くルシクないネ』
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加