妖怪!枕返しオジさん

1/14
前へ
/14ページ
次へ
 ツヨポンは夜なべをして  ドレス〜を編んでいた〜♪  徹夜で編み物をしていた剛は、ハイになり無意識に歌を口ずさんでいた。  編み物の専門学校に通う猿渡剛(さるわたりつよし)は課題の『よそ行きニット』を作成していた。大抵の学生はセーターとかワンピースを作っていたが、剛はお呼ばれにも着ていけそうなドレスを作っていた。  男子とは思えない細くしなやかな指で毛糸を操る。軽くウェーブした前髪の下から見える微笑みを浮かべるその顔は、まるで女神のようである。  繊細かつ豪華なバラのモチーフ編みを幾つもつなげたトップスと、膨らんだ膝丈のスカートをつなげた上品なカナリア色のドレスがほぼ出来上がっていた。 「あとは裏地を付ければ出来上がり〜」  そこで一息つこうとコーヒーを飲みにキッチンへ向かった。作品を汚さないよう、部屋では飲食をしないようにしていた。 「ファ〜。あ、剛おはよう〜」  丁度母親も起きてきた。 「ママおはよ……!!! ママ! 髪、どうしたの!?」 「え?」  剛に指をさされ母親は寝癖が酷いのかと髪を触った。 「髪……髪の毛……」  剛の狼狽(うろた)えように不安になった母親は「え〜、何よ〜」と言いながら洗面所に行って鏡を見た。 「イヤ〜〜〜!!!」  鏡を見て母親は驚愕した。  髪の毛が真っ白になっていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加