ホワイトクリスマっ白

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 今日は良い日、メリークリスマス!  目が覚めたら、白。  外は一面の雪世界。 「んー、空は青、大地は白。今日は人の世も目に見える光景も、とてもロマンティックじゃないか。なあ、我がベストフレンド」 「そうだな。友よ。降誕祭にはふさわしい」  だ・が・し・かし!  二人は口をそろえて言った。 「祝いの日に恋人同士が街にあふれるってのは、何なん?」 「良い日なんだし、別にいいじゃないか。でも、あ~あ。あそこ、カップルみろよ。あんな、ああ~、あんあんな」 「おおお落ち着け我がベストフレンドよ。ただ並んで歩いているだけではないか」 「輝いてるよ」 「ほおおうっ」 「何じゃか涙が」 「涙では雪に色は付けられんなあ」 「クリスマスって茶化したりする日じゃないだろ。いけない。少し落ち着こう?」  二人は雪の空き地の上で叫んだ、ハードに最高にロックに。  Do your best!  Do my best! 「わかったぜ! 異性の仲間を見つければいいんだ」 「なるほど。俺たちと同類の異性を見つけ出せば、もう誰にも白い目で見られない今日という、Today is the day!」  Let's go. Now, go.  怪しい英語を呪文のように唱えつつ、男子二人組はとある女子の家の呼び鈴を鳴らした。  家から出てきた女子は伊達眼鏡のフレームに指を添えながら言った。 「何か用? クラスメイトだけの存在のくせに」 「すんげー、ドS」 「なあ、一緒に外を歩かないか? この一面の雪景色に、異性相手の色を付けてみるのもわるくないぜ、今日という日は、分かり合えるだろう? 俺たちなら」 「怒りの色しか付かんわ!」  バタンと勢いよく扉は閉められた。 「気にすんな。頭が良い奴ってさ、もう笑うしかないって状況に出会ってしまったら、こうだからな」 「うん。僕はもう落ち込まないよ」 「パンダシーオンラインにログインしよっか」 「そうだな。昨日と今日は見栄を張ってログイン欠席なんてのは10年まえのマル秘報告だしな」  二人はそれぞれの家に帰り、パソコンの電源を入れ、片方はパソコンの起動エラーを告げるブルースクリーンに目の前が真っ白になり、もう片方は、オンラインゲームを起動し、画面に映し出された文字が、  緊急メンテ。終了時刻未定――  頭の中が真っ白になった。  今日はメリークリスマス。良い日、楽しい日。でも僕ら、目が覚めたら、白。白ばかり。 <はい。終わりです>
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