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Eternal Punishment
内臓時計の刻む時間が、やけにゆっくりな感じを覚えた。
「……開始時刻まであと5、4、3、2、1……突入せよ」
主任の冷淡な声を聞き、執行官たちが汚いアパートの扉を蹴破った。
「手を上げろ、逃亡犯! ここにいるのはわかっている」
サーモグラフィ、生体反応の探知機を搭載しているこちらから、逃れられるわけもない。やがて1人が彼、IR171を発見した。私は素早く逃げようとする奴の足を踏みつけ、腕を拘束する。
「やめろ、離せ! このっ……!」
「……IR171だな」
主任が彼の前に立ち、その顔を見た。ひどく醜い顔で主任を睨んでいる。
「指定された収容所から逃げ出し、労働を怠り、人間でありながらロボットであると偽り、ここに隠れ住んでいた。逃亡罪、労働未執行罪、詐欺罪、住居不法取得罪、計4つ罪状において貴様を逮捕する」
「……このクソロボットどもめ!」
奴が私たちをねめつけ、腕の中で暴れる。主任は相変わらずの無表情でそれを眺めていた。
「…………公務執行妨害罪も付け足されたいか?」
主任がそう言った瞬間、面倒な動きが止まった。
「……聞き分けだけは良いようだ。よろしい。では刑を執行する」
「は? 裁判は……」
主任が手元の端末を操作する。
「裁判? あぁ、虚偽の報道内容を真に受けているのか。そんなもの、お前たちの前には存在しない。収容所にいる人間どもの目をくらませるための、カモフラージュだ」
「なっ、てめぇ……! 俺らのことなんだと思ってんだ!」
再び暴れ出した奴を力づくで押さえ込む。人間の急所である首元を、骨を折らない程度に強く押さえた。
「……動物だ。それ以上でもそれ以下でもない。では貴様らは豚が犯罪行為をした場合、豚を証言台に立たせるのか? 馬鹿馬鹿しい。話にならない」
端末から顔を上げ、主任は男にその青白い光を放つ左手を振り上げた。
「刑は我々、執行官がふさわしいものを選んで執行する。お前の刑は、分離刑だ」
男が目を見開き、何か言おうとした瞬間、主任の左手が奴の頭に入り込んだ。
その途端、私の腕の中にいた肉体がだらりと崩れ落ちる。
『分離刑執行。IR171の魂及び精神のインストールを確認。サーバーに転送します』
無音の空間の中で、オペレーターの声が朗々と響いていた。
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