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「では、全国の収容所にいる人間の皆さんを今度どうするか。私たちは1つの結論を出しました」
彼らは期待に満ちた目で画面を見つめた。きっとここから出て自由になれると思っているのだ。私は少し首を捻った。労働をしなくなった彼らに価値はあるのか、と。そして仮にこのまま彼らを釈放したら、また人間とロボットの戦争になるのではないか、という懸念もあった。
「…………ロボットの皆さん。労働もしない、自分たちの数を増やすこと以外生産性のある行動もしない、私たちに害をもたらし、国のコストを増やすだけの存在に、果たして生きる意味があるのでしょうか? 知能の面で我々に遙かに劣り、計算もろくにできず、合理性の欠如した、この生物に」
人間たちの顔が曇り始める。これに関しては私含めこの場にいる全てのロボットたちが、迷うことなくこう答えるだろう――――もちろんいいえだ、と。
「これは、精神保管サーバー、『ジェイルオブプシュケ』と言います。人間たちの、精神および、魂を保管するためのものです。この中に人間の魂が入っている時、その人間はまるで死体のように動かなくなります」
画面にはあの大きなサーバーが映った。……が、本来ある位置とは違う場所にある。この黒い壁は一体どこだ?
「現在この『ジェイルオブプシュケ』は宇宙空間内に設置されています。宇宙局のはじき出した計算では、軌道上で何らかの物体に当たることによって、隕石の直撃を回避することが、100%可能であるとのことです」
不意に主任が動いた。ざわめきだす人間たちの正面に立つ。
「ロボットの皆さん、今待ちわびた瞬間に立ち会えることを、本当に嬉しく思います。この隕石を持って、私、アストリア大統領レイチェルが、人類の処刑を行います」
悲鳴、怒号、叫び声がホールの底から沸き立った。……あぁ、煩い。耳を塞いだ瞬間、また別の悲鳴が響いた。主任の左手が光っている。――――彼らの魂がここから消え去り、あの、遠い宇宙へ、吸い込まれていく。ばたばたと、私の目の前で奴らが倒れていく。と、同時にドアがけたたましく破られる。精鋭の機動隊。
「あちらに収めきれない人間は、物理的に破壊しろ」
主任の短い命令を受け、立ったままの人間たちが撃たれていく――――死んだふりなど無駄だというのに。倒れた中にも生き残りがいたらしい。引き金がひかれる。この場における私たちの仕事は1つだ。
「ぐあっ、離せ! 離せ!」
この場から逃げようとする者の始末。
「では、人類の処刑を開始します」
彼女の後ろ、その画面には大きな隕石が、小惑星目掛け、正に落ちてこようとしていた。
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