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とにかく連絡を取らなきゃと公衆電話を探す。
会いに行くつもりはあるんだとなんとかして伝えたかった。
どうでもいいなんて思っていない。大切に思っている。それだけでも伝えなければ、取り返しのつかないことになりそうで怖い。
同じことを考えた人が多いせいか、今度は公衆電話にも長蛇の列ができていた。隣との間をふさぐ板に体をもたらせたり、クルクルと指にコードを巻いたり、後ろから見ているとみんな似たような行動をとっているのがわかった。
そんな群衆の一人に今僕もなっている。
あいつを好きになって僕は馬鹿になった。
もっと冷静で物事を俯瞰して見れる大人のつもりだったのに。あいつのことに関してだけはポンコツすぎて嫌になる。
天井まで届きそうなツリーのテッペンでは星が光り、飾られた色とりどりのガラスボールが通り過ぎる人をゆがませながら映している。
その中に見慣れた姿を見つけて、ぼくは目を見張った。思うより前に駆け出している。
見間違いじゃなかった。
絶対、間違えるはずがない。
ここにいるはずもないのに。
「春樹!」
ずっと呼びたかった名前。
今僕の中の全部を占めている本人がすぐ目の前にいる。人の目なんか気にならなかった。追いついて抱きしめる。
「なんで、こんなとこにいんだよ」
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