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6 降りかかる災難、幸福の足音
季節が移ろい、明け方から降り続いた豪雨と共に雷鳴が轟く6月のある日。
放課後の生徒がほとんど残っていない教室で、一緒に帰ると約束した神澤が訪れるのを待っていた時のことだった。
「ノア」
突然、ねっとりと絡み付くような声で呼ばれ、はっと顔を上げると、いつの間にか隣にいた東條がにたりと笑っていた。
そして、その後ろには橋場がいて、ぞっとするほど冷たい目で睨みつけてきている。
「な、何の用、だ……」
「ちょっと顔貸してくれない?大事な用があるからさ」
言動に乱暴さはさほどないが、鋭い眼光に射すくめられているうちに強い力で後頭部を掴まれると、どういう意図があるのか、ぐいと橋場に顔を近付けさせられた。
途端に強烈なフェロモンが鼻を襲い、咄嗟のことで息を止める間もなく大きく吸い込んでしまう。
「……っく……ぅ……」
カッと体が発火したように熱くなり、理性で抑えようとしても股間のものがもたげ始めたのを感じた。
無意識に足を擦り合わせると、それを見た東條が不気味な笑みを広げて腹部を蹴り上げてくる。
「……うっ……」
痛みのあまり意識が薄れていく中、東條の舌なめずりする顔が見えた。
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