エピローグ

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川北の帰国の日、若菜は空港まで迎えに行きたいようだったが、俺は遠慮することにした。俺だったら、親には数時間後の便名を伝えさせておいて、空港から自分ちに直行だ。 何なら一日偽ったっていいと思う。 だって、一年我慢したんだから。 家族だって寂しかったし、一日も早く会いたいんだろうとは思うけど、そういう家族愛と、俺たちが抱えてる気持ちは…ちょっと、かなり違う。 一晩中抱き続けたって、足りないと思う。 当然健太もそうしてるだろう…してるよな? あいつの天然具合には時々びっくりさせられるから、もしかしたら川北の家に直帰してるかもしれないけど。 今年はGWも遠出せず、真面目に勉強する。 ステラは、きちさんが中心になってバイトさんも上手く動いてくれて、充分やっていけてるらしい。俺たちが行かなくても、大丈夫そうだ。 時々は慧さんと千春さんと、元気に育ってる赤ちゃんとでお出かけしたりできる日もあるって聞いてる。 この間も、三人で公園で遊んでる写真が俺たちに送られてきた。 よかった。 俺と若菜は、お互いどこの企業の説明会に行くかとかを完全に共有している。縛るわけではない。知っておいた方が不安にならずに済むと思ったんだ。 大学の就職指導を最大限に活用して、まずは情報収集から。 長い1年になりそうだが、またいつでも四人で出かけたりできるのは悪くない。 俺は今日も若菜の家の玄関をチラリと視界に入れながら、駅に向かって歩き出した。 第四章 完
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