プロローグ

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現在は、大学1年次を終えて春季休暇中だ。 4月末に予定している、第二回OBオケの本番が近いので、練習は毎週末に入る。 前回の本番後に、上の学年からかなりの参加希望があり、金管打楽器すべてそろった。 ティンパニを借りられる練習場所も何回か確保して、今回はフルオケでの演奏会だ。 メインのプログラムは、ベートーヴェンのシンフォニー7番。某音楽マンガ原作の実写ドラマで、かなり有名になってしまった曲だ。 コンマスに若菜がいるのだから、シェヘラザード再演とか死の舞踏とか、派手にバイオリンソロが入る曲を持ってくれば、という意見も多かった。 でも、若菜が頑として受け入れなかった。 高3の演奏会では、木管の同級生の懇願に折れて受け入れたが、今回はそこまで木管陣の技量も安定していないから、結果としては良かったと俺も思っている。 そうそう、高校の時は俺もかなり素で若菜とやりあったから、周囲も引くほどの言い争いの末に若菜が折れたんだった。今回は無理する必要はないというのは、俺も若菜も同意見だ。 オケのメンバーは大体そろってきたけど、まだ指揮者が確定しない。 ちゃんとオケを掌握してくれてる指揮者がいないと、大曲は危ないとも思う。 そもそも彼女は、自分が主役になることが好きではない。技術的にはかなりのものだが、ソロよりも合奏が好きという、変わったバイオリン弾き。 わかっちゃいるんだ。若菜のそんなところも、愛おしいと思う。 それに、若菜を手に入れた今…あの艶めかしい音を人に聞かせるのはちょっと癪だ。シェヘラザードは若菜とキャラが合いすぎて、ちょっとやばい。
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