プロローグ

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プロローグ

大学生というのは、やりようによっては4年間遊び倒すこともできる、なかなか幸せな時間だ。 世の中に出るまでの、猶予期間。 親に養ってもらい、学費を出してもらい、講義は居眠り。 テスト前になって慌てて、真面目にやってる奴のノートを求めに走る。 俺はそんなヤツらとは違うとか、偉そうなことを言う気はない。俺だって、高校からのツレの速水健太ほど、真面目にストイックに勉学に励んでるわけではない。 国家公務員試験に現役で合格するために必要な努力はしている。でもそれは、いつか若菜との生活を手に入れるために必要なこと。 …俺だって、自分ひとり楽しく過ごせばいいのなら、周囲と同じように遊びまわってたかもしれない。昔から寄ってくる女も多かったから、落ちていくのは簡単だっただろう。 若菜のことが好きだったから、告白してくる女はすべて断っていた。 街中を歩いていて、知らない女に声をかけられることもある。 若菜のことがなければ…好奇心に負けて応じることだって、あったかもしれない。 正直、最後の方は…心が折れかけたことだってあった。何とか踏みとどまったけど。 そう、誰にも言ってないけど一番やばかったのは最後の夏合宿だったな。後輩に呼び出されて…引退も近づいててなげやりになってる自分に気づいてたから、とっさに健太を近くに待機させた。健太が聞いてくれてるのを知ってたから、流されずに済んだなと思う。 若菜と健太がいなかったら…俺はとんでもないダメな奴で終わってたのかもしれないな…
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