18人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヘリさえ落としてしまえばあいつらは帰れない。そうなれば、あとはジェットパックの燃料が尽きるまでゆっくりと相手をしてやればいい」
シャドゥーはクレバーで頭も切れる。剣術では影の王やデスには及ばないが、作戦を立てることについては一流だ。ヘリを鎮めれば精神的にも皇帝軍が有利になる。
「もらったぞ」
シャドゥーは後方から混戦状態の空域を大きく回り込み、バードが操るヘリコプターへと俊足で移動した。共存軍の兵士たちは目の前の敵に集中してしまい、誰もシャドゥーの姿を捉えられなかった。ただ一人、視野の広さが常人離れしているアークを覗いては。
「ヘリが危ない! バード!」
アークは今までにないくらい大声で叫ぶと、シャドゥーの前に立ちふさがった。そのあまりにも大きな声にメカドやレッドが振り返る。しかしその時にはアークの姿は消えていた。
「邪魔だ」
シャドゥーが静かに言い放つと同時にバードが悲鳴を上げた。首のないアークの死体がヘリのコックピット目掛けて飛んできたのだ。肉塊となったアークはガラスを貫通し、操縦系統をめちゃくちゃに破壊した。
「アーク! バード!」
メカドは二人を助けるべく剣を振り払い全速力でヘリへ戻る。しかし無情にもシャドゥーはメカドの横を飛び
「馬鹿め」
と呟くと、残り二機のヘリコプターを強力な鉤爪で引き裂き爆破した。あまりの一瞬の出来事にレッドたちは時が止まったかのように放心してしまった。アークの血がまるで雨のように空域に降り注ぐ。
「アーク……」
レッドは頬についた血をふき取った。これは仲間の血だ。さっきまで共に訓練をし、戦ってきた友の血だ。レッドは震えた。恐怖ではなく怒りで――。
最初のコメントを投稿しよう!