戦争は始まったばかり、チャンバラはまだ始まらない

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 アロスは迷っていた。彼は一度も敗戦をしたことがない。そんな自信が彼を油断させたのか。それともただ単に敵が強すぎたのか。ここまで無様に攻められたのは初めてのことだった。 「九と十艦隊はまだ動けるのか?」 「はい、被害は少なくまだ動けます」  アロスには秘策があった。地球の軌道上での艦隊戦。太陽の光を背中につけることができれば相手の目がくらんでこちらに勝機が生まれる。しかしまだアロスたちの艦隊は夜のなかだ。太陽が昇るまで待たなければならない。  ミサは不安そうにアロスを見つめた。並みの司令官ならオペレータの自分が強引でも撤退させるべきだと思った。しかし相手はアロスだ。ミサは自分の独断で作戦を失敗させてはならないと考えた。 「第八艦隊を後ろに下げて、第十艦隊を進軍させろ。勝機は必ず来る。それまでみんな持ちこたえるんだ!」 「わかりました」  アロスに言われた通りミサは指示を送り、戦局は少しずつ動いていく。 (焦るな、まだチャンスはある)  アロスは汗ばむ拳を握りしめた。一度も負けたことがないというプライドが彼の信念とぶつかっていた。それはまるで今、目の前で起きている戦争のようだった。 「第九艦隊、敵艦隊を撃破しました!」  ミサの喜々とした声が艦内に響く。アロスの指示が功を奏し、敵の艦隊は大打撃を受けていた。それは同時にアロスの心の中でも起こり、失いかけた自信が蘇ってきた。 「その調子で前に進もう! いくぞ!」  アロスが叫んだ時、指令室が光に包まれた。真っ白な光がすべてを包み込むと、彼は気を失ってしまった――。
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