戦争は始まったばかり、チャンバラはまだ始まらない

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――共存軍作戦司令部――  目覚めると安っぽいコンクリート天井の下だった。アロスは右足に火傷を負い、地球の基地に運び込まれたのだった。彼は軍病院の個室でベッドの上に寝かされていた。身体を起こしたところで、共存軍の上官メコ将軍が入ってきた。 「……艦隊は、無事なのですか?」  アロスが尋ねた。メコ将軍を暗い雰囲気が包んでいた。 「全滅だ。第五艦隊から第十艦隊まですべて。ミサ以下、君の直属の部下も全員死んだ」  アロスは言葉を失った。俺だけが、偶然レーザーの標的になって助かった。作戦は大失敗に終わり、アロスの信念も砕け散った。 「……すべて私の責任です」  長い沈黙のあと、アロスは口を開いた。そのひとことを言うだけで精一杯だった。 「君が生き残ってくれただけで十分だ」  メコ将軍はアロスを見つめたが、彼が目を合わすことはなかった。
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