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雪原から見上げた空は、不思議な色だった。
虹色のカーテンが、ゆっくり流れている。
空から、舞い降りている雪。
はらはらと積もっていく。
虹色のカーテンが出る夜は、月は見えない。
銀色混じりの白い毛並みをした、とてつもなく大きな狼が息を白く吐いて私を睨んでいる。
『白い狼は、神に仕えている。逆らったらイカン。銀は、まさに神だ』
祖父の言葉。
「アナタは、神様?」
小さな声の問いかけ。
「贄か……」
コクリと、頷いて私は応えた。
私は、村から差し出された贄。
神のための……村が生き残るための、贄。
父母は、私が産まれて幼い時に亡くなり、祖父母が代わりに育ててきた。
18になって、祖父母も冬になる頃に亡くなった。
狼は、クイっと大きな口先で方向を示した。
後ろをゆっくりついて歩き、森の光が射し込む小さな場所で止まる。
空に向かい、咆哮が響き渡る。
村への合図だった。
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