虹色のカーテンの下ー神の狼ー

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久しぶりに見ている虹色のカーテン。 今まで見てきたのと、違うようでいて、同じようでいて。 宵闇のなか、冬の寒さはないのに出ている夜空の虹。 「コワイか?」 ギルが訊ねてきたが、「不思議と恐さはないの」と応えていた。 彼を見つめ、再び言う。 「懐かしくて、初めてでいて……恐くない」 「ソウカ」 どちらともなく、口づけを交わす。舌を絡め、(ちぎり)を交わしはじめる。 あの甘く痺れる感覚と、高揚していく身体。大きな体躯(たいく)に組敷かれ、交わす口づけ。 「っ……ふっ……ぁっ」 昂ぶり始めた雄は、洞窟の時のソレと比べられないモノへと変わる。 洞窟でのコトが、受け入れの準備の時間だったのが肌で感じられた。 「ギル……ふっぁ……」 「カワイいな」 (とろ)けた瞳に、口づけで紅みをまして、ふっくらとした唇。 小さな舌が、番の狼を求める。口づけしている唇から、甘い声が漏れ続け互いの頭の中に響き渡る。 ーギルといたいー ー離れたらイケナイー 自然とアミは、そう感じた。 応えるように、ギルが(ささや)いた。 「オレのとなりはアミだ。アミのとなりはオレ」 「子をたくさんハランでくれ」 そう言い切ると、愛撫は優しく激しくなりアミは彼を受け入れるために全身が応える。 空には虹色のカーテン。 その空の下。 番の契は、疲れ果て休んでは、また……と、続けられた。 ギルは、私に素直に気持ちを伝え、愛でてくれる。 契を交わす日々。 虹は消えることがない。 そして、白と銀の毛並みだったギルは、銀色のみの毛並みになっていく。 何度も吐き出し受け入れ続けた彼を、虹色のカーテンの下で銀色の狼になったのを目の当たりにしながら(あえ)いでいた。 終わりの見えない時間は、彼が変化して暫くすると少しずつ消えていく。  宵闇から、朝陽が見えてきた。 女と銀色の狼は、泉で水浴びをし身体を綺麗にした。 再び寝床に戻ると、虹色のカーテンだけは残り春の庭へとなっていく。
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