19人が本棚に入れています
本棚に追加
雪が広がる森を歩く。
肩がけバッグに入っていた最低限の食料は、1週間で尽きてしまった。それからは、狼が狩ってきた野うさぎを貰い受けた。
バッグから出したナイフで捌く。
紅い鮮血が、白い雪を鮮やかに染め上げた。小さな枝に、火打ち石で火をおこして捌いた肉を焼いて食べた。
狼は、野うさぎに被りついて食す。
じわじわと漏れしたたる紅い血が、銀色混じりの白い狼の口を染めていく。
ザラリとした舌が、私の顔を舐めた。
「……旨そうだ」
ードクンー
妙な胸の高鳴り。はやる鼓動。
食事の心地はなくなっていた。身体から何か違うモノを求めていた。
村から出て、2週間。
雪に覆われた岩山に着いた。
狼の住処と思しき洞窟があった。
中へと案内され、着いた夜は藁を掻き集めて作られた寝床で眠った。
最初のコメントを投稿しよう!