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雪の季節がより厳しくなりはじめ、洞窟の入口は雪が激しい風で舞い込む。
外から、ゴウゴウと音が鳴り響く。それが、洞窟内を不気味に反響し異様な声に聴こえた。
寝床の藁にうずくまるように、カタカタと身体が震える。
ー大丈夫……大丈夫ー
必死に頭の中に唱える。
温かいぬくもりを、背中越しに感じた。震えが少しずつ和らぐ。
ベロッ。
ざらつく舌に首筋を舐められる。
ドクドクと全身に血がまわり始める。柔らかな毛並みを首筋に感じた。
振り返ろうとする私を、「そのままでいろ」と狼が言う。
「名前……聞いてないな……」
「あっ……」
1ヶ月以上、ともに居て互いに名前を名乗っていなかった。
贄なのだから、捧げられて食されるとばかり考えていた。
「アミ……です」
「……アミ……オレは、ギル」
「あの……私は食されるんですか?」
ギルが身体を震わせている。
何か変なことを言ったのだろうか?!
「いや、村の者は知らん。そのうち分かる」
そう言い、ギルは私の首筋や髪の匂いをかいでは首筋を舐めた。
獣肌に温められ、吹雪の日を過ごした。
彼の体温とザラつく舌の感触。身体に少しずつ妙な感覚が出始めた。
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