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洞窟に陽射しが注ぎ込んできていた。
気が付くと、吹雪はやんでいる。小さな雪は降っているが、風はない。
吹雪の日が、幾日続いていたか? わからない。
脱がされていた服を着て、洞窟の入り口近くに座り込む。後ろから、狼が歩み寄り座る。
同じ空を眺めていても、違うモノを見ている気分だった。
「いくか・・・・・・」
「どこへ?」
ギルに支度を促され、過ごした洞窟から出る。
森に入った日のように、彼の後ろをついて歩く。
柔らかい雪が降り続く中を歩く。岩山に囲まれた、道を歩く。
こんな岩山に、野うさぎはいたのだろうか?! ギルが狩ってきてくれていたうさぎは、どこにいたのだろう?
「ギル?」
「・・・・・・なんだ?・・・・・・」
「野うさぎ・・・・・・ありがとう」
「・・・・・・ぁあ・・・・・・」
岩山にこんなにも囲まれている中で、野うさぎを見つけ出して狩るのは苦労したはずだ。それも、吹雪が始まる時に・・・・・・。
彼は、少し照れているのか? こちらを見ずに道を進む。
陽が高く昇っている。冬の厳しい季節には、珍しい太陽。岩山にあたたかな陽射しがあたり、寒さをいくらか和らげている。
「ついたぞ」
抜けた道の先には、見たことがない景色が広がっていた。
冬の季節が多い場所で育った自分には、初めてなのに・・・・・・懐かしく感じる感覚。
「・・・・・・ここ・・・・・・」
夢の中にいるのだろうか? 目の前には、春が広がっている。小さな野花が咲き、野うさぎをはじめとする動物だち。
そして、大きな体躯の狼たち。その傍で寄り添う番と、その子供たち。
ギルが大きな口で、私を軽く咥えて背中に乗せた。
「もどった」
そう、ひと言いうと、春の広場の狼たちが咆哮をあげた。
祝福と歓喜の咆哮。
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