虹色のカーテンの下ー神の狼ー

8/11
前へ
/11ページ
次へ
洞窟に陽射しが注ぎ込んできていた。 気が付くと、吹雪はやんでいる。小さな雪は降っているが、風はない。 吹雪の日が、幾日(いくにち)続いていたか? わからない。 脱がされていた服を着て、洞窟の入り口近くに座り込む。後ろから、狼が歩み寄り座る。 同じ空を眺めていても、違うモノを見ている気分だった。 「いくか・・・・・・」 「どこへ?」 ギルに支度を促され、過ごした洞窟から出る。 森に入った日のように、彼の後ろをついて歩く。 柔らかい雪が降り続く中を歩く。岩山に囲まれた、道を歩く。 こんな岩山に、野うさぎはいたのだろうか?! ギルが狩ってきてくれていたうさぎは、どこにいたのだろう? 「ギル?」 「・・・・・・なんだ?・・・・・・」 「野うさぎ・・・・・・ありがとう」 「・・・・・・ぁあ・・・・・・」 岩山にこんなにも囲まれている中で、野うさぎを見つけ出して狩るのは苦労したはずだ。それも、吹雪が始まる時に・・・・・・。 彼は、少し照れているのか? こちらを見ずに道を進む。 ()が高く昇っている。冬の厳しい季節には、珍しい太陽。岩山にあたたかな陽射しがあたり、寒さをいくらか和らげている。 「ついたぞ」 抜けた道の先には、見たことがない景色が広がっていた。 冬の季節が多い場所で育った自分には、初めてなのに・・・・・・懐かしく感じる感覚。 「・・・・・・ここ・・・・・・」 夢の中にいるのだろうか? 目の前には、春が広がっている。小さな野花(のばな)が咲き、野うさぎをはじめとする動物だち。 そして、大きな体躯(たいく)の狼たち。その(そば)で寄り添う(つがい)と、その子供たち。 ギルが大きな口で、私を軽く(くわ)えて背中に乗せた。 「もどった」 そう、ひと言いうと、春の広場の狼たちが咆哮(ほうこう)をあげた。 祝福と歓喜(かんき)の咆哮。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加