虹色のカーテンの下ー神の狼ー

9/11
前へ
/11ページ
次へ
春の広場に、散り散りに過ごしていた狼たちが、ギルとアミのもとにやってくる。 狼たちは、やってきたギルの(つがい)に優しい(まなこ)で見つめる。 懐かしい瞳もなかには感じられた。 奥から、一番大きな体躯をし、銀色の狼がゆっくり歩み寄る。 「……見つけたのだナ。ギルよ」 「ハイ」 銀色の狼は、私に近づくと頬ずりするように挨拶(あいさつ)をした。 自然と自分からも頬を寄せていた。 「名は?」 「アミです」 「そうか……良い名ダ。ワタシは、長老とヨバレている」 「よろしくお願い致します」 アミと挨拶を交わした長老が、私たちを奥へと案内した。 泉があり、大きな樹がある。樹の根元には、真新しい寝床があった。 野花が散りばめられ、柔らかな(わら)の寝床。果実も山盛りに用意されている。 「ココでともにすごすがヨイ」 「ありがとうございます」 ギルは、丁寧に礼を言い私をゆっくり寝床へと降ろす。 ふわりと太陽の匂いと、野花の香り。甘い果実の匂い。 次々に、祝いの花などが寝床の周りに置かれていく。野うさぎや小鳥たちからも……ここにいる、全ての動物たちからの祝福。 ギルは寝床にゆっくりあがり、隣に座る。 首筋を優しく撫でるように触れる。 全身の血が駆け巡る。 「っ……まだ……」 「まだ? みながいなければヨイのカ?」 意地の悪い聞き方をしてくる狼。身体を近づけ、さらに悪戯(いたずら)するように、アミを()でる。 思わず反応し、声を漏らす。 「イヤ……ではナイな」 不敵な笑みを浮かべるようなギルに抱きつく。 「?!……ソレ……は、反則ダ」 アミの思わぬ反撃にあっているギルに、長老は豪快に笑う。 「ギルよ……ヌシは敷かれたナ」 「!!……ちょ、長老……」 「まぁ、ワカイもの同士。ゆるりとすごすがヨイ」 長老の狼は、周りの狼たちに合図をし去って行った。 泉の周りだけが、違う空間を創り始めた。 宵闇(よいやみ)へと変わり、虹色のカーテンが現れた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加