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春の広場に、散り散りに過ごしていた狼たちが、ギルとアミのもとにやってくる。
狼たちは、やってきたギルの番に優しい眼で見つめる。
懐かしい瞳もなかには感じられた。
奥から、一番大きな体躯をし、銀色の狼がゆっくり歩み寄る。
「……見つけたのだナ。ギルよ」
「ハイ」
銀色の狼は、私に近づくと頬ずりするように挨拶をした。
自然と自分からも頬を寄せていた。
「名は?」
「アミです」
「そうか……良い名ダ。ワタシは、長老とヨバレている」
「よろしくお願い致します」
アミと挨拶を交わした長老が、私たちを奥へと案内した。
泉があり、大きな樹がある。樹の根元には、真新しい寝床があった。
野花が散りばめられ、柔らかな藁の寝床。果実も山盛りに用意されている。
「ココでともにすごすがヨイ」
「ありがとうございます」
ギルは、丁寧に礼を言い私をゆっくり寝床へと降ろす。
ふわりと太陽の匂いと、野花の香り。甘い果実の匂い。
次々に、祝いの花などが寝床の周りに置かれていく。野うさぎや小鳥たちからも……ここにいる、全ての動物たちからの祝福。
ギルは寝床にゆっくりあがり、隣に座る。
首筋を優しく撫でるように触れる。
全身の血が駆け巡る。
「っ……まだ……」
「まだ? みながいなければヨイのカ?」
意地の悪い聞き方をしてくる狼。身体を近づけ、さらに悪戯するように、アミを愛でる。
思わず反応し、声を漏らす。
「イヤ……ではナイな」
不敵な笑みを浮かべるようなギルに抱きつく。
「?!……ソレ……は、反則ダ」
アミの思わぬ反撃にあっているギルに、長老は豪快に笑う。
「ギルよ……ヌシは敷かれたナ」
「!!……ちょ、長老……」
「まぁ、ワカイもの同士。ゆるりとすごすがヨイ」
長老の狼は、周りの狼たちに合図をし去って行った。
泉の周りだけが、違う空間を創り始めた。
宵闇へと変わり、虹色のカーテンが現れた。
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