1章 夏牡蠣のレモン添え

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 偵察艦は小惑星の周囲を回りながら撮影を続けている。 土砂でカモフラージュしている場所の上を飛べば、解析されて発見されてしまう。 「麻里亜艦、偵察艦を2時方向に確認したよ」 軍事では、一般社会では法律に裁かれるような暴力が許される。 相手に犠牲者が出ようがそれが正義なのだ。 「いい位置ね。いつもの攻撃(・・・・・・)をお願い」  麻里亜の3番艦はミサイルを大量に積んだタイプ。 一度に大量に発射することによって、撃ち落しはもちろん回避すら不可能にする。 可愛らしい童顔に似つかわしくない邪悪な笑み。フード付きのトップスを(なび)かせて宣告する。 「血煙の天使(ブラッディエンジェル)、麻里亜様の前に立つことすら罪なのさ」 オーバーロード。 銀河の星々の数に迫ろうかというミサイルが、目標に襲いかかる。 d917b649-d49a-458d-8a79-a24f2a6b54f8 偵察艦のあった場所には、雲状に飛び散った金属片が漂っていた。 裾を払いながら、お粗末様とお辞儀をする。 「生存者いたら救助してあげるよ」  通信で冷静な舞宇の声が聞こえてくる。 「大丈夫、いないわ。データ解析……無人偵察艦です」 無人艦相手に気張ってしまった麻里亜は、恥ずかしそうに引き上げてきた。
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