1章 夏牡蠣のレモン添え

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 メイオールIIκ<カッパ>の会議室。 リーベリー提督が副官に付近の小惑星の探査結果を聞いている。 「小惑星のひとつ周辺を航行中、信号が途絶えました」 先日の電子機器不能攻撃といい、偵察艦の消失といい、危険な香りがする。 「主星に支援をお願いしようか」 ジェイムズ提督はこれに反対する。 彼は誇り高い貴族院の出で、他人の援助を嫌う。 また彼は慎重な性格だ。戦闘のありそうな状況になると逃げる。 提督4番手の毛利まるるが2番艦を操作し、ジェイムズは惑星に戻る。  支援に関しては、先日の会議中の発言の揚げ足を取られる。 「私掠対策は3艦で十分と言ったのはリーベリー殿ではないですかな」 「それは単独の海賊を想定してのことだ。今回は天ノ川銀河からの軍事行動に違いない」 会議の多数決で、支援要請は却下されてしまう。 「艦を失ってからでは遅いのだが」 横では毛利まるるが戦えると喜んでいる。思わず舌打ちをする。 「野蛮人どもめ」 天ノ川銀河の星の数はアンドロメダ銀河の半分しかない。 彼らにとって、天ノ川銀河の人のイメージは未開人そのものだ。
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