1章 夏牡蠣のレモン添え

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 毛利まるるはキラリと目を輝かす。勝算はあった。 時間にして1時間ほど後。米粒サイズにも見えなかった敵艦が視認できる位置まで来ている。 「接近したら、戦艦戦というより航空戦を想像してもらうといいかな」 眼前で麻里亜艦がミサイルの大量撃ちをした後、インメルマンターンで逆方向に逃げていく。 対するこちらは、ミサイルも敵も粉砕する連弾の矢。 それは毛利の名前にかけただけの高速ロケット弾の連射だ。 a257ccde-8f5c-4073-bb8e-874eda087c19 その弾幕は、麻里亜のミサイルを確実に撃ち落した。 「あぅ……」 麻里亜のため息が()れる。まるるは追撃位置にあり、撃ちながら迫っていく。 このまま追えば撃墜できるように思える。  副官のコッド氏は心配そうに提督を見る。 「分かってるよ、敵2番艦は近くに見えないけど……」 2番艦はゴースト化して付近にいるのだ。見張りより連絡がある。 「左舷後方よりレーザー反応。回避できます」 戦闘機動(ヨーイング)でレーザーを避け、右に転進しようとする。 だがコッド氏は、戦前の位置関係からその方向に注意するように言う。 「右舷に敵がいるはずだ」 「そんなはずは……」 転進は強行される。右に曲がって数秒後に答えは出た。 まるるは呆然として通信回線の晴香の声を聞く。 「初撃はリフレクタービットによるレーザー反射だよ」 2撃目のレーザーは思った方向とは全く違う位置。 晴香艦が正面から、回避運動中のまるる艦を粉砕した。
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