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「仄香さん……」
どうやら篠絵に内緒で原始イプシロイアの応援に来ているらしい。
桧原家は煤香と仄香がいて、アルビノが煤香で黒髪が仄香だ。
煤香はラケアニアの提督で、仄香は篠絵派の提督とまぎらわしい。
「鶯弥は分かっとーか?」
原始イプシロイアは篠絵派だ。遊撃隊の電脳戦は宇宙の戦いの代理戦争だ。
平和に行われているように見えるが、負ければ優位を失う。
「でも、戦っている子たちは楽しんでます」
そろそろ電脳戦が始まる。
司会のフローレンスが選手の紹介をする。
モニターに映るルリアーユは歌劇団の男役にいそうな娘だ。
「あと2戦。遊撃隊対原始イプシロイアの戦いも激戦となってまいりました!」
解説のメルキドーラが戦車名の書いてある紙を司会に渡す。
「ルリアーユは横幅2.3mのBT-7。神流は横幅2.7mの九五式重戦車ロ号です!」
先手を打ってきたのはルリアーユ。
「毒蜘蛛……そう渾名されています」
掃敵微小機械――――
神流の生体の中に毒蜘蛛型の自律機械が転送されてくる。
ちょうど喉辺りにその毒の牙を突き立てる。
「うっ……」
「どうやら噛まれたようね」
神流は平然として言い返す。
「これハ号ちゃんね。常人なら即死」
生体管理局で量産された毒蜘蛛で、神流は被験者参加していて毒に抵抗を持っていた。
「被験者……9割死んだのよ? 貴女……」
9割死ぬような実験をする管理局は狂っている。
「そう。適合者、薄木神流」
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