29章 激甘のパンプディング

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 鶯弥は前回に引き続いて電脳戦の係員を担当する。 晴香は鶯弥に前回の感想を聞いている。 「筐体は1戦1戦壊してもらうように作ってあるんです」 自動車の構造に近い。派手に壊れるけれど、外で衝撃を全部受け止めてあげる。 中にいる人は飛んできた破片で肌を切るくらいだ。 CADで過去の戦車や航空機を再現するんだけど、移動力や火力や装甲を反映させるだけで、筐体内はみんな同じつくりになっている。会話は敵についてに。 「対戦相手の奏さんまだ登録終わってないんですよね」 「奏は使えそうな武器を見てくるって」 事故の確率は少ないと言っても、命がかかっているだけに最後まで迷う。 「Λ<ラムダ>のジャンク街はアドニス並に治安悪いからなぁ」 死んだら不戦勝になるだけなので、酷いようだが遊撃隊にとってはどっちでもいい。  奏は雑居ビルの1つを選んで入っていく。 入っていくのは怪しげな薬中毒の男や、落ちぶれた軍人の荒くれ者が多い。 可愛いので浮いてしまっているが、中の取引所の店主は分かっている。 「東の国からの先鋒……奏様ですね。噂は聞いております」 航空電脳戦は弱小参入チームが多い。 たいがいは1戦して死傷者を出して撤退するのだが、その原因を作るのが彼女だ。 「回転銃・零(リボルバー・ゼロ)ですか」 ロシアンルーレットで6発の弾倉に1発の実弾が入っているとする。 彼女はその1発を不発にして敗北を回避する。原理は不明だ。 「危ない奴じゃないですか!」 強盗しようとでもしたのか、取引所近くの男が怯む。 撃ち合いになったら奏の弾が一方的に当る。
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