君のためならばかでいい

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でも、それにはひとつおかしい点があるじゃないか。私は、「嘘だ」と抗議する。 「私がカゼなんか、ひくわけないよ」 「なんで」 「だって、ばかはカゼひかないっていうじゃん。私ばかだもん」 と言いつつ、声がへろへろになっているのも感じる。うう、これじゃ、なんだか本当に調子が悪いみたいに思える。おかしい。ばかはカゼ、ひかないのに。掛け布団を引き上げて、そのまま、中に隠れた。 ふっ、とかすかに雅也が笑った声がする。 「知らねーのか。夏カゼは、ばかがひくんだ」 「うるさい…ばかにすんなあ」 「自分で言ったんだろ」 ほら、顔隠してたらおしぼり頭に載せらんねーぞ。雅也は、ばさっと私の布団をはねのける。乱暴な音のわりに優しい手つきなのが雅也らしいなあ、なんてことをぼんやりとした頭で考えて、急に恥ずかしくなった。 ぱっと顔をそらしたいけれど、首を動かすのも無理なくらい体がだるいので、しょうがないから悪態をつく。
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