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やばい彼氏と白い雪~ゲレンデに花束を~
***
暖冬だと思っていた冬。
12月も中旬に入り途端に寒さが増し、各地で雪が降るくらいになってきた。
「恭平!雪!雪降ってきた!」
珍しくテンション高く帰ってきた恋人。
頭と肩に白い粒を乗せて玄関の前でたっている。
休日で朝から出掛けた恋人を電気の入っていないコタツの中で黙って待っていると「なぁ、恭平タオルくれない?」と声がかかった。
「えぇ。折角温まっていい感じなのに……」
電気が入っていなくても十分温かさを感じていたコタツからぬらりと出て黙ってバスルームへ向かう。
「恭平?」
恋人は俺がいないと思っているのか不安げな声を出す。
もうすぐクリスマス。
俺は恋人に秘密にしている事がある。今年のクリスマスは"真面目に"過ごそうと思う事。
ふざけたクリスマスじゃなくて大人な男って所を見せつけてやろうと思っている。
風呂から出てほくほくしている恋人の言葉を聞かなければ―――――
「なぁ恭平。俺さ─────に、有太とスノボー行ってくるから、─────で……」
恋人のあんな言葉を聞かなければ、俺はジェントルマンでいられたんだ。
何時か言われた"イカサマ・ジェントルマン"なんて事は言われずに済むだろうと思っていたのに……。
『やばい彼氏と白い雪~ゲレンデに花束を~』
作・SIVA
「え、何?」
「お前の耳は何時からじじぃになったんだよ」
「や、ちょっと。これはちゃんと聞かなきゃいけないなって思ってさ。で?」
「で?じゃなくて……あぁだからさ、有太とスノボー行こうって話になったから行ってこようと思ってんだけど」
「うん、それは構わないよ?で?」
「だから何だよ」
この鈍い頭を揺さぶって発狂したい気持ちを抑えているのに、目の前の恋人は素っ頓狂な顔をしている。
「いつ行くっつったよ?」
「だから12月24に……ち……」
日付を口にしてようやく気がつくあたりホント、イベント事には疎い奴だ。
「倫太郎?ちゃんと言って?お前はいつスノボーに行くんだ?」
俺の気迫に怖気付いた恋人はワナワナと慌て始める。
「や、だ、だって、ゆ、有太が……スノボー行こうって言うから……その」
「俺をほっといてクリスマスイブに泊まりで行くわけか」
「誰が泊まるって言った?」
またすっとぼけた顔をしている。
「言った」
「……言った?」
「うん、言った」
「言った……か……」
ゆっくりと踵を返しながらキッチンに逃げ込もうとする恋人、倫太郎の腕を掴みコタツに引き込む。
「わっ!」
「シャワーを浴びたのは俺に抱かれたいから?」
弱点の耳攻めに倫太郎の身体の力はみるみるうちに無くなっていく。
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