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私達は元大統領の車に乗り込み、空港からカリフ大学病院に向かった。
車は市の中心にある広場の前を通っている。私はその広場の中央の大きな銅像に目を奪われた。
「ミスターインファニ、車を停めて頂けますか?」
私がそう言うと車は広場の前で停車してくれた。
私は車から降りると広場の中央に向かい、そこに飾られた銅像を見上げた。直ぐにドクターマヒドラが追い掛けて来た。
「それはドクターの銅像だよ。国民の英雄としてここに建てられたんだ」
私は少し考えて彼に聞いた。
「ねぇ、銅像の台座に昇ってもいいのかしら・・?」
彼は一瞬困った様な顔をしたが「いいんじゃないか、君なら・・」と言ってくれた。
私は台座の階段を昇って父の銅像の足元に立った。もう一度見上げると銅像の高さは五メートルはあるだろう。私の頭が銅像の膝の位置だ。
私はその銅像の右足を抱き締めた。
「私はパパの遺志を継いでこの国に貢献するわ。パパのことを今も尊敬している。大好きよ、パパ」
私は父にハグしながら、昔、父に『言えなかった言葉』をもう一度言った。
見上げると父の銅像が私を見て嬉しそうに微笑んだ様に見えた。
FIN
『この物語をアフガニスタンで亡くなられたドクター中村に捧げます』
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