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ボディガードの家族
機体が停止しドアが開いた。駐機場は多くの人々で溢れており、その先頭に居る人物を見て私は呟いた。
「・・インファニ・・大統領・・」
私達がタラップを降りると大統領が駆け寄って来た。
「ようこそアサブラ国へ。そしてドクター田所に怪我を負わせてしまい、祖国の代表として深く陳謝したい」
大統領の言葉は綺麗な英語だった。母は英語を話せないので私が代わりに答えた。
「大統領、お会い出来て光栄です。そして父を助けて頂いて感謝致します。早く父の病院に行きたいのですが・・」
彼は大きく頷いた。
「直ぐに向かいましょう。でもその前にあの女性に会って頂きたい。彼女は貴女達に謝りたいのだ」
彼は振り返るとある母娘を指さした。母親の方は私とそんなに歳は変わらない様に見える。娘は三歳くらいか・・。
私がその母娘に軽く会釈すると、彼女達が駆け寄って来た。
「奥様、お嬢様、本当に申し訳ありません。夫がドクターを守れなくて・・」
その女性は私達の前でそう話した。私はその言葉を母に翻訳した後、彼女に問い掛けた。
「貴女の夫が父を? どう言うことですか?」
彼女の瞳は涙で一杯だった。
「・・夫は、ドクターのボディガードでした・・。娘を手術で助けて頂いて・・、それでボディガードを買って出たのに、お守り出来なくて・・大変申し訳ありません・・」
私はその言葉を母に翻訳しながら機内での大使の言葉を思い出していた。
『・・身を挺してドクターを守ったボディガードは死亡した・・』
母もそれに気付いた様だ。両手を口に当てて首を大きく振っている。
その女性は大粒の涙を流し始めた。母が大きく手を広げて女性を抱きしめた。
「旦那様を亡くされてどんなにお辛いでしょう。そして夫を守ってくれて本当にありがとう」
私がその母の言葉を訳して伝えると、彼女は大声で泣き始めた。彼女の横で小さな女の子が自分の母が泣き出したことを驚いた顔をしている。女の子はまだ自分の父に起こったことを理解できない様だ。
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