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空の色とは対照的なくすんだ赤い鳥居を潜ると、少年はお社の縁側の下に潜り込んだ。何かごそごそやった後、少し汚くない、古いぼろぼろの毛布のようなものを抱えて少年は出てきた。
少しするとその毛布のようなものからごろごろと音がする。
「今日もいい子にしていたかい、三」
三と呼ばれた毛布の正体は、やや窶れた毛並みをした猫だった。仲が良いのか、少年の制服に体を擦りつけては、ごろごろと音をたてている。
三という名は、髭が左右対称3本ずつであることから少年がつけた。ある日少年がこの神社に立ち入ってからもう3ヶ月程、毎日毎日ここに来ては、猫を愛でているのだった。少年は生粋の猫好きなのだ。彼に弟妹はいないが、いたらさぞ面倒見の良かったことだろう。
少年は先程までの冷ややかで大人らしい顔から一転して、可愛らしい子供の笑顔になっていた。やはり、見た目と中身は違うものだ。
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