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少年は猫に餌をやり、しばらく戯れ合ってから立ち上がった。とうに日は落ちきって、空の藍は濃く深くなり、先刻までは指でを折って数えるほどしかなかった星も、今や何百何千と増えて、輝いている。
「それじゃあ、もう時間だよ。また明日。」
そう言って少年は駆け出した。その後ろ姿を猫は寂しげに見つめた。
さて、ここまでで当然ながら察していただけただろうが、この無力な可愛らしい少年こそが我らが主人公である。
そして、少年の背が長い階段の下に隠れるまで、少年自身も、彼の猫でさえも、猫の他のもう1つの視線に気付くことは無かったのだった。
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