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さて、猫はさておいてその日の経緯である。
少年はいつものように、猫を抱えては戯れ合い、抱えては戯れ合っていた。
ふと、がさがさと葉が擦れる音がするのに少年は気が付いた。この神社を囲む森の一方からするようだった。
少年の心中の不安を察したのか、猫は打って変わって澄ました顔になった。
緊迫感が、そこら一体を張った。
そして、ちょうど音のしたところから金色の髪の、紺色の羽織を纏った和装の男が姿を現した。
少年は、かなり混乱していた。彼の住むその土地に現れるこんな風貌の人間は、大抵が西洋人だ。しかし目の前の男は、確かにおかしな金色の髪をしているが、顔は東洋人、それも日本人なのだ。おまけに浴衣を着ている。
男に見つめられ、しばし沈黙が流れた。
少年は恐怖感とも緊張とも言えない何かに縛られていて、動けないでいた、
少年ははっと我に返ると、一目散に駆け出した。男はいつものように少年の背を見つめていたが、猫はといえば、男を一心に見つめているのだった。
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